名画の食卓を読み解く ~世界の食文化を絵画から考察~

皆さんこんばんは!

 

さて本日は私がお気に入りの書籍の紹介をします。
まず初めに、皆さん中世~近代のヨーロッパの雰囲気好きじゃないですか?(私だけ?)
もともと歴史は好きで集英社の世界の歴史シリーズを全巻読んだり、授業中もテスト範囲外のところを読破したり・・・
あと資料集って配られませんでしたか!あれを読み込むのがすごい好きでした!

実際にそういった時代好きかと言われればちょっと疑問符がわきますが(どちらかというと古代ギリシャやローマのほうが好きです)雰囲気は断トツで中世ヨーロッパです。
なので、美術館も時たま行きましたし、教会や大聖堂は大好きですし、那須や伊豆にあるステンドグラス美術館は私の最高にお気に入りスポットです。

そんな中世ヨーロッパの雰囲気だけ好きな私が紹介するのがこちら

この本は、欧州の銀器を専門とする筆者が書いた著作です。欧州の食卓の歴史や時代背景をその時代に描かれた絵画を題材にして紹介しています。
通常、絵画といえば美術史の説明や考察がメインと思いがちです。
しかしこの本は、食文化にフォーカスし、古代~中世を中心とした食文化の説明や、これまで私たちが「常識」と漫然に思い込んでいたイメージを丸ごとひっくり返してしまう話も含んでいます。
私のような、ただ中世ヨーロッパの雰囲気に浸りたい方から、ヨーロッパの文化史を一歩踏み込んで知りたいといった方まで幅広く参考になる本です。

今回はこの本の中で、私が特にお気に入りの章を簡単に紹介いたします。
皆様がこの記事を読んで少しでもこの本に興味を持ったり、実際に購入する手助けとなれば幸いです。

1,ベリー公のいとも豪華なる時祷書
こちらはこの本の表紙にもある絵画です。

この章のなかで私がへぇ~なるほど!!と感じた項目がこちら

➀給仕する人物
➁食卓という舞台
➂移動する食卓

3つとも普段日常生活を過ごしているとなじみがなく、ん?と思ってしまうタイトルですよね。

これらはすべて、中世ヨーロッパの食卓文化の中で生まれたものであり、➀は食卓に出されるロースト肉をサービスする人物は、その家の中でエリート家臣が務めるといったことや、➁王族、貴族の食事は舞台上での演劇と同じようなものであり、大勢の家臣前でのふるまい、➂宴席を行う会場は多目的ホールであり、準備片づけを迅速に行うため、以外と簡素なつくりをしているといったことが書かれています。

どうしても海外の文化に触れることが少ないと、すべてが日本と同じケースに当てはめてしまいがちなので、食事一つとっても、国や地域、時代によって変わっていくんだなと読み始めから実感した章でした。

2,フランドル農民の食卓
こちらは冬の直前に行われる農民の行事の一つで、豚を絞めている場面が描かれいています。

中世ヨーロッパの農民にとって豚は大切な家畜です。
肉はもちろん、内臓や血を含めた加工肉は保存性が高く、厳しい冬を乗り越えるのに欠かせない食料となりました。

そんな農民たちの普段の食事は「野菜のごった煮」でありその中にベーコンの肉片を入れることでコクを出す、そして、最後に残った肉片を食べられればそれだけで幸せといった状況でした。
それ以外に肉料理を食べられるのは、結婚式など限られた場面のみであり、この食事スタイルは19世紀まで変わることはなく、よく私たちがイメージする「欧米の食事は肉食」は狩りを行う王族、貴族の中での話であり、人口の大半を占めていた農民たちの生活とはかけ離れたものです。

著者はこの章の中で、欧州でヴェジタリアン志向が生まれたのはこの「野菜のごった煮」が一因ではないかと述べています。

3,ロードメイヤーの宴席
私の特にお気に入りの絵画です。

こちらはナポレオンがセントヘレナ島に追放され、勝利を祝った連合国首脳会談を描いた様子を描いており、1の➁で述べた「食卓が舞台」という構図をそのまま描いています。

構図としては、各国首脳が奥のハイテーブル、一般席のローテーブルに分かれており、ハイテーブルに座る首脳たちをローテーブルの一般人(それでも社会的地位は高いですが)が見上げる形をとっています。
また、女性はこの場に参加できず、右上の「観客席」で見ることしかできなかったというのも現在の私たちからすると驚きですね。

現在、このような宴席は、コース料理が一般的ですが、19世紀ではいわゆる「フレンチサービス」という形式をとっています。これは簡単に言うと最初からすべての料理をあらかじめテーブルに並べておくというものです。「フレンチサービス」では食器やテーブルの大きさを計算したうえで、正確な料理設計図まで作成されてたというのですから驚きです。こうした形式では料理は宴席が始まるころには冷めきってしまい、出来立ての料理を食べるということはまず考えられなかった時代でもありました。

個人的にこの絵画のお気に入りのポイントとしては
1,シャンデリアにつけられたろうそくの光と、それに反射する銀食器の美しさ
2,宴席の様子が事細かに描かれていること
3,絵画の中心にいる人物の存在感(笑)

があります。
3の人物がどのような人なのかは本を読んでのお楽しみとしておきます。

以上、ざっと紹介させていただきました。
このほかにも、「食卓で手を洗う」といった一見「えぇ・・・」と感じてしまう章や「英国のディナーパーティー」など読んでてその時代背景がよくわかることがたくさん書かれています。

難しく、構えて読む必要はなく、ただ単に絵画が描かれた時代ではこういう風に食事を行ってたんだ!という豆知識を手に入れる理由や私みたいにただ単に雰囲気触れたいといった動機で読み始めても面白い本です。

私は大学生のころ、たまたま図書館にあったこの本に惹かれ、貸出期間ぎりぎりまで延長借り入れを行い、その後本を購入するくらいはまりました(笑)

今回の内容が少しでもこの本を読んでみようかな?といったきっかけになれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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